冷風機能付き除湿機は、エアコン本体と室外機が一体化されたような屋内専用の家電です。一般的にコンプレッサーとエアコンガス(冷媒)が使われており、吹き出し口より“本物の冷たい風”が出ます。
工事不要で置くだけ簡単、除湿しながら涼めるなんて団地にも良いですね!と言いたいところですが、排気口より熱風が出るため室温はほぼ確実に上がってしまいます。
そのため、夏に涼む目的で使おうと思うと、屋外へ熱を逃がす「ホースが付いた機種」がおすすめです。
ホースが無いタイプの冷風機能付き除湿機を使った場合に「どれくらい涼しくて」「どれくらい室温が上がるのか」を実際に試してみました。
冷風機能が付いた除湿機の購入を検討している方のご参考になれば幸いです。
冷風機能付き除湿機は涼しくなるのか?
シャープ:CV-B100は以下のような機能が付いています。
- 冷風モード
- 除湿モード
- 切タイマー
- スイングルーバー(吹き出し口が上下に動く)
- 風量切替(強・弱)
- 定格消費電力:260/305W
- 使用冷媒:HFC-134a
- 質量:12.5kg(重たい!)
冷風モードにすると、夏はスポットクーラーとして使えます。エアコンの設置が難しかったり専用コンセントがない部屋にも使いやすいですね。
除湿モードでも冷たい風が出るため、冬に結露防止や部屋干しとして使うと寒いとのこと。除湿機として年間を通して使いたい方には「冷風機能付き」は向いていないかもしれません。
それでは、冷風機能付き除湿機を「室温26℃/湿度62%」の部屋で閉め切った場合に3時間運転させてみた結果を順にお伝えしていきます。
除湿機の前にいると冷たい風で涼しい
運転を「入」にすると吹き出し口が自動的に開き送風が始まりました。この時点では、まだ常温のままです。
しばらくすると「カチャン!!」という大きな音と共に徐々に冷たい風が出てきます。この音はコンプレッサーのマグネットクラッチが作動する音ですね….。
ビックリするくらいの大きな音がしました。最近は良くなっていると思いますが、他機種でも作動音には注意です。
マグネットクラッチの超ザックリとした説明
冷媒を圧送するコンプレッサーの駆動は大きな負荷がかかりモーターの消費電力が大きくなります。
駆動を必要とする時だけ電磁石でプーリー(滑車)とコンプレッサーの軸をくっつけてON。駆動させない時は解除(フリー状態)にしてOFF。の繰り返しで省電力を図っています。
※冷やす⇒送風⇒冷やすの繰り返し
冷たい風が出てからの吹き出し口温度は「17.6℃」でした。
エアコン本体と室外機が一体化したような機器なので当然ですが、除湿機の前にいるとスポットクーラーのようにかなり涼しい風が出ます。
吹き出し口が横長でそれなりの風力があり、以前作った自作クーラーと同程度の風温でも体に風が当たる面積が大きくて心地良さは断然、冷風機能付き除湿機が良いです。
手軽に涼しさを求めるならエアコンが取り付けられない時の選択肢の一つとしてはアリですね(本体の前にいる前提)。定格消費電力が260/305Wで少し大きいのは難点。
ちなみに弱風でのコンプレッサー駆動時の騒音は60dB(デシベル)前後。音が気になるか気にならないかの微妙なラインというところです(僕は気になります)。
排気で室温が上がり除湿機の前から離れられなくなる
排気口の温度は「51.3℃」まで上昇していました。めちゃくちゃ熱いですね。元々の室温が26℃に対して後ろから50℃の風が出ていると徐々に部屋の中が暑くなってきます。
この熱を有効活用できないかな?もしかすると100均に専用のカゴのようなモノが売っているかもしれません。
斜めに撮影していてズレているように見えますが、3時間経過した時点では「室温26℃/湿度62%」⇒「室温30℃/湿度50%」になりました。
運転 | 室温 | 湿度 |
---|---|---|
運転前 | 26℃ | 62% |
運転後 | 30℃ | 50% |
差 | +4℃ | -12% |
湿度が12%下がっても室温は4℃も上昇しており、除湿機の風に当たっていない顔回りや下半身は妙に暑くて不快感を覚えます。涼む目的としては除湿機前以外にいると逆効果ですね。
とはいえ、熱エネルギーは「冷たい」と「熱い」の等価交換のような性質があるので仕方がないことです。冷たい風が吹き出し口から出る代わりに熱い風が排気されます。
冷風機能付き除湿機は室内全体の温度を下げるわけではなく、むしろ上がるので「お一人様用かつ室内でじっとしている人向け」です。
同室内で家族と共有したり家事で動き回る時に使うのはおすすめしません。
ホース付きなら熱を外に排出できる
最近はこういった室温上昇を緩和するために「ホース付き」の除湿機や家庭用スポットエアコンが主流になってきています。
出典:Amazon
熱を屋外へ排出するイメージは上記画像のような感じです。ホースが標準で付いていない、付けられない機種はホームセンターでダクトを購入して自作するしかありません。
窓パネルを装着しても室内全体が冷える訳ではないのですが、排気熱を室内で循環させなくなるので室温上昇を極力抑えられますね。
35℃を超える真夏に排気熱を室内で循環させるのは危険だと思います。今回、冷風機を試してみて夏場に涼むには「ホース付き一択」と感じました。
ちなみに3時間運転させただけで約150mlもタンクに水が溜まりました。空気中にはこんなにも水分が含まれているのですね。
※長時間使うと満水で自動停止するのが使いにくいそうです
コンプレッサー式の除湿機は、デシカント式(ヒーター式)よりも消費電力が低く高温時の除湿能力が大きいです。しかし、コンプレッサー式は冬にも冷風が出てしまいます。
それに冷却した結露で湿気を取り除くため低温時の除湿能力が落ちたり運転音が大きかったり、コンプレッサーの部品構成は本体が重たいというデメリットもあります。
- デシカント式より省電力
- 高温時の除湿能力が高い
- 冷風機能付きで涼める機種がある
- 低温時の除湿能力は低い
- 運転音が大きい
- コンプレッサー内臓で重たい
(大抵はキャスター付き)
用途にもよりますが、クーラーの使用も必要なら夏用と割り切ってコンプレッサー式の冷風機能付き除湿機が良いと思います。
僕の大好きなアイリスオーヤマでも「ポータブルクーラー(アイリス公式詳細ページ) 」として同じような家電が販売されています。こちらはノンドレン方式で水を蒸発させるため排水の手間がないとのこと。
※高湿度時は水抜きが必要
窓パネルも標準で付いているようです。予算に合わせて検討してみてくださいね。
まとめ
冷風機能付き除湿機の一番のネックは価格です。
そこそこのお値段がするため、手を出しにくいと思います。とはいえ、工事不要で物理的にも一番冷える家電となるため、エアコンが取り付けられないご家庭に向いています。
あまり書くと怒られますが、TVで頻繁にCMをしている水を使った某気化熱式の冷風機は「室温35.1℃、湿度30%」という日本の気候ではありえないような条件で測定しているので騙されないようにしてくださいね。
(東京・大阪では1年を通して平均湿度が50%超)
それにフィルターが邪魔をして風量が弱く、抗菌フィルターでも1シーズンごとの取り換えでランニングコストが高めです。あれを買うなら自作クーラーをおすすめします。